二ホウ化マグネシウム(MgB_2)は金属系超伝導体として高い超伝導転移温度や上部臨界磁界等のポテンシャルを有しているにもかかわらず、十分な臨界電流密度(Jc)特性が得られていないことについて粒間における電流経路有効断面積(コネクティビティ)を含めた観点から研究を行ってきた。本年度では以下に示すような成果が得られた。 MgB_2超伝導線材において高いJc特性を得るためには、線材内部にある空隙を極力少なくすることが重要である。このために我々は不純物添加等を行ってきた。不純物の中には芳香族化合物などのように、結晶粒界の結合性を改善し、コネクティビティーを向上させ、Jc特性を向上させるものが存在することがこれまでの研究でわかってきた。しかしながら、不純物自体はMgB_2結晶粒内だけでなく、結晶粒間に偏析等して電流経路を阻害する要因である。これに対して、MgB_2のコネクティビティーを上昇させるには空隙を減少させることが重要である。本研究では線材自身に圧力を負荷しながら熱処理を行うホットプレス法を用いてコネクティビティーの観点からJc向上への評価を行った。パウダー・イン・チューブ法で作成した線材に対して、100MPaの圧力をアルゴンガス雰囲気下で負荷しながら、650℃で熱処理を行った。これらの線材においてはJc特性が低磁場から高磁場における全磁場領域において向上していることが明らかとなった。組織観察の結果、空隙が大幅に減少しており、コネクティビティーが17%から21%まで上昇していることがわかった。以上の結果、ホットプレス法がJc特性を向上させるのに有効であることを示すことができた。
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