長距離秩序を持つTa-Te系の準結晶が実現されれば世界で初めての長距離準周期秩序をもつ12回対称準結晶の合成となる。これまで長距離秩序を持つTa-Te準結晶が作製できていない要因として、Teの高い蒸気圧が指摘されている。Teの気北を高圧で抑制し、固相-固相反応による長距離秩序を持つTa-Te系準結晶育成の可能性を調べた。 平成19年度の研究で得られたTa-Te系相図をもとに準結晶合成の温度-圧力-組成、準結晶成長条件の探索をおこなった。得られた相図の情報から、合成を行う圧力を本年度は6 GPaと9 GPaに限定しだ。出発物質と試料カプセルの種類、合成を行う温度までの昇温時間や、保持時間、冷却時間など準結晶成長パラメータを詳細に変化させ、良質な長距離準周期秩序を持つTa-Te準結晶の合成条件の探索を行った。その結果、いずれの合成条件でもTaTe_2が安定化し、準結晶組成のTaTe_<1.6>は合成されなかった。熱力学的安定条件下では長距離秩序を持つ準結晶相が安定に存在しない可能性を示す結果となった。 Ta-Te系の相図を精密化するために角度分散型の放射光その場観察実験システムの構築を行った。その結果、従来のエネルギー分散法による放射光その場観察では確認できなかったTaの高温高圧下での粒成長の様子を観察することに成功し、TaTe_2とTaの混合物が高圧下における加熱でも融解まで反応せずに分離していることが分かった。本研究で得られたTa-Te系の高温高圧下での相関係と角度分散システムについては論文発表のため準備を進めている。
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