本研究の目的は、ナノ金触媒の活性発現メカニズム解明を目指し、触媒反応が起こっている状況を"その場"で"原子レベル"で直視観察することである。 研究期間内において、触媒反応を電子顕微鏡内で起こさせるための"ナノ・ラボラトリ電子顕微鏡システム"を自作で完成させることに成功し、数千Paという、実際の触媒反応が起こっているのに近い状況を再現し、それを観察することが可能となった。 その一環として、ガス導入出用の試料ホルダーについて、従来よりもガス導入出のコンダクタンスを10倍にも改善出来る装置を新規発明し、特許を出願した。また、システムの要たる反応ガス・シール用の隔膜も非常に耐久性の高いものを開発し、これに別材料のコーティングをすることで更なる強度向上に成功している。この手法についてもすでに特許出願中である。 本装置を用いた観察の結果、ナノ金触媒は反応中に形状を大きく変化させていることが明らかとなった。これは従来の触媒とは異なる振る舞いであり、非常に有意義な成果と言える。さらに、形状変化はナノ金粒子の上部のみで、担体との接合部付近はほとんど構造変化していないことも分かった。この結果は、ナノ金粒子と担体とが非常に強い相関を有していることを示唆しており、高い触媒活性の発現に寄与しているものと予測される。 上記の成果は、特許、論文、国内外の学会で発表し、非常に高い評価を得ており、招待講演も依頼されたものであり、今後も本分野でのメインストリームとして注目されるものと自負するところである。
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