本研究の最終目標である「単一分子発光の分光イメージングと発光制御」の達成に向け、本年度は主に以下の2つの研究を行った。 まず、単一分子発光の観測に重要となる、蛍光発光のプラズモン増強効果の最適化を行うため、Auナノ構造上のフタロシァニン薄膜からのプラズモン増強発光特性評価を行った。実験では、透明電極基板上にナノスフィアリソグラフィによって作製したAuナノ構造について、STM発光分光法を用いて単一のAuナノ構造のプラズモン発光特性を詳細に評価した。また、Auナノ構造上に蒸着によって作製したフタロシアニン薄膜からのSTM発光の観測に成功し、単一分子発光の観測に必要な、Auナノ構造のプラズモン増強効果による分子蛍光発光の検出に成功した。 次に、同じく単一分子発光の観測に重要となる、アルカンチオール自己組織化膜による分子消光低減効果を評価するため、アルカンチオール自己組織化膜をバッファー層としたフタロシアニン薄膜からの発光特性評価を行った。実験では、Au(111)基板上にドデカンチオール自己組織化膜を作製し、Au(111)表面のプラズモン発光特性を評価した。また、自己組織化膜上に蒸着によって作製したフタロシアニン薄膜からのプラズモン増強蛍光発光をSTM発光分光法によって観測し、アルカンチオール自己組織化膜が分子消光を防ぐためのバッファー層として機能することを確認した。 以上のように、本研究の目標達成に向けて重要な上記準備実験では非常に良好な結果が得られている。また、本研究の最終目標である「単一分子発光の分光イメージングと発光制御」において、ターゲット分子として研究実施計画に示したポルラィリン連結型アルカンチオール分子に関してはその合成が終了している。現在、この分子の自己組織化膜形成技術、STM発光分拳法による単一分子発光検出についての研究を行っている。
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