本研究の目的は、表面プラズモン共鳴法に基づいた化学・生体分子センサをプローブ顕微鏡による表面観察手法を兼ね備えた分光イメージング手法へと発展させることにある。本研究終了年度である今年度は、単一分子レベルからの微弱発光を増強し、検出可能にするため、ナノスフィアリソグラフィ法によって透明平坦電極基板上にAuのナノ構造を作製した。走査トンネル顕微鏡による発光分光分析により、作製したAuナノ構造表面には分子からの微弱発光を増強する場となる表面プラズモンを誘起可能であることを示した。さらに、ボルフィリン誘導体の一種であるフタロシアニン分子をAuナノ構造表面に配置し、分子スケールにおける発光検出を試みた。その結果、分子からの発光をナノスケールの空間分解能で検出することに成功した。また、この手法を通常のフォトルミネッセンス法では量子効率が低く、蛍光発光の検出が困難な銅フタロシアニン分子に適応した場合においても、分子レベルからの発光を検出することに成功した。この結果は、表面プラズモンを利用することによって、従来手法では検出困難な色素分子からの発光を誘起できることを示しており、幅広い種類の分子種を分子スケールで検出可能な分析手法として本分光イメージング手法が大変ユニークな特性を有していることを示した。 研究年度の後半においては、本研究において開発した発光増強手法を発光デバイスに適応し、高効率発光素子の開発を行った。発光デバイス素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機トランジスタの作製を行った。Auナノ構造を取り込んだ有機エレクトロルミネッセンス素子では、Auナノ構造を持たない素子に比べ発光効率が25倍も増加し、本研究で開発した発光増強手法が発光デバイスにも適応可能であることを示した。
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