本研究では、チタン系酸化物を用い色素増感太陽電池と温度差発電を組み合わせた光電変換・熱電変換ハイブリッド素子への可能性を探る。具体的には光照射下でTiO_2/SrTiO_3膜のゼーベック効果を観測し、TiO_2で光励起されSrTiO_3に注入された電子が熱電効果に寄与するか否かを明らかにする。平成20年度は、光電変換材料と熱電変換材料のハイブリッド化のための準備として、主に結晶成長に関して以下のような結果を得ることができた。 RFスパッタリング法を用いて酸素無供給下でSrTiO_3薄膜を作成し、X線回折装置を用いて評価を行った。基板温度を室温にしてSrTiO_3の成長を行い、非結晶化した試料を大気中でアニールすると立方晶のSrTiO_3の回折ピークが得られ、結晶化することがわかった。これは、低コストでSrTiO_3を作製する手段として有効である。きらにターゲットにNb粉末を同時に用いて結晶成長を行い室温アニールをしたところ、オージェ電子分光の結果から結晶中にNbが取り込まれることはわかった。しかし、キャリアが活性化する現象はみられず、今後の検討課題を得た。 また、市販のナノサイズTiO_2を用いて、色素増感太陽電池(グレッツェル・セル)を改良し、スパッタリング法で用いる基板と同じ大きさの1cm角のもので作製し、再現性よく(約10%のばらつき)発電効率が一定のものを作ることができた。 これらからSrTiO_3 : Nb薄膜のキャリアが活性化出来れば、薄膜の上にTiO_2を用いて色素増感太陽電池を作製し、光励起された電子がSrTiO_3に注入されたことを確認する実験ができる。
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