本研究では、チタン系酸化物を用い色素増感太陽電池と温度差発電を組み合わせた光電変換・熱電変換ハイブリッド素子への可能性を探る。平成21年度は、主に色素増感太陽電池の電極材料であるTiO_2薄膜、温度差発電材料であるSrTiO_3:Nb薄膜の結晶成長に関して以下のような結果を得ることができた。 RFスパッタリング法を用いて自作ターゲット材料にてSrTio_3:Nb薄膜を作成し、X線回折にて評価を行った。SrTiO_3粉末とNb粉末を混合し加熱圧着したターゲットを用いて室温でスパッタした非結晶試料を大気中でアニールを行うことにより、立方晶のSrTiO_3が成膜できることがわかった。スパッタ電力が高く、アニール温度が高いほど、結晶性が良いことがわかった。アニール後の試料はX線回折の結果から結晶化していること、オージェ電子分光の結果から結晶中にNbが取り込まれていることが確認されたが、キャリアが活性化することは確認できなかった。一方、TiO_2薄膜についても同様に粉末焼結ターゲットによる成膜法でアナターゼ型TiO_2の成膜に成功した。これらから安価にTiO_2/srTiO_3:Nb薄膜を得る可能性を示唆することができた。 さらに、光照射下で市販の導電性SrTiO_3膜のゼーベック効果を測定したところ、光照射がない場合と比べてゼーベック係数に若干の変化がみられた。原因は特定できていないが、励起光の工夫により光励起が熱電効果に影響を与える可能性があるのではないかと考えている。 以上の結果から水素アニールによりSrTiO_3:Nb薄膜のキャリアが活性化でき、薄膜上にTiO_2を用いて色素増感太陽電池を作製し光励起された電子がSrTiO_3に注入が確認できれば、ハイブリッド化に道が開ける。
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