研究概要 |
本研究の目的は,物質表面における近接場光の特異な偏極の性質を用いた,有機分子の結晶構造形成過程の制御およびその近接場光チャネリング法を開発することである.光近接場の局所円偏光による分子系への角運動量移行を介した局所的な光反応過程の制御や,近接場励起に対する分子配向・スピン状態の選択性を持たせた近接場チャネリングについて検討する.H19年度では,これらの基礎となるナノメートル領域における偏極近接場光による分子マニピュレーションおよびナノ物質の移動・配列制御,さらに,分子系の光近接場励起と輸送に関する基礎的な研究を行った.具体的には,申請者が重点的に取り組んでいる,アゾベンゼンを含有する有機分子系の光構造制御に注力し,以下4つの研究成果をあげた.(1)まず,これまでに開発してきた合成エバネッセント波による偏極近接場光における,PMMA-co-DR1分子のナノ構造形成と光配向変化について評価するとともに,CR分子の異性化状態に応じた分子光スイッチング現象について詳しく検討した.(2)また,シアフォース近接場光学顕微鏡を用い,近接場光反応における物質移動現象のリアルタイム解析を行い,さらに物質近傍における分子系の近接場励起特性について調べた.(3)近接場励起の素過程として重要な,金属・誘電体界面におけるR6G分子のエバネッセント波励起について検証した.プリズムカップリングによる近接場の放射分布測定から,金属へ数10nm近接させた分子から金属側へ波数と偏極の選択的に近接場光トンネリングする様子が明確に観測された.振動双極子のエバネッセント波展開を用いた理論解析を進めた.(4)また,光加工分子薄膜を用いた100nm微小球の配列制御法を開発し,これを用いる近接場励起の変調制御について理論的に検討した.
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