研究概要 |
本年度は, 前年度までに提案してきたフェムト秒レーザリソグラフィを利用した無機材料の立体的表面加工プロセスの高度化を行った. フェムト秒オーダの超短パルス光が誘起する非線形光吸収により, レジスト内部を直接に露光することが出来る. 様々な微細構造形成で多用される半導体プロセスは, 複雑な微細パターン形成に有用であるが, 平面上にフラットトップパターンを形成する技術であり, 斜面や曲面などの立体的表面や, 立体基板上へのプロセス適用は困難であった. 本研究では, フェムト秒レーザ誘起非線形光吸収を半導体プロセスへと導入することで, 複雑な立体的表面構造の形成や, 同プロセスの立体基板上への適用拡大を実現した. 使用したレジスト材料に関して, オープンアパーチャーZスキャン法で非線形光学特性評価を行い, 17-23cm/TWもの高い2光子吸収係数が見積もられた. この大きな非線形性により, 大きな高低差を有するマイクロ流路底部であっても, 複雑な立体表面構造を有する回折型レンズを形成することが可能となった. 流路内で流体を移動させることで, レンズの可変化を行い, 設計値に近い光学特性を確認した. また, 非線形吸収領域の先端部を利用することで, 低開口数レンズによるレーザ集光であっても, 高い露光分解能を得られることを理論的に示すとともに, 従来法では作製が困難であったマイクロ流路底部に, プラズモン励起用のサブ波長金属周期構造を直接形成することに成功した. これらの研究成果は, 各種学術論文への投稿や, 光励起プロセスや機能材料, 電磁波制御に関する国際会議, 応用物理学会などで発表した.
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