本年度はレーザー照射による電気伝導性向上のための基礎的検討を中心に行った。まず、n-typeのシリコンカーバイド基板に真空蒸着装置でチタンとニッケルを蒸着し、1000℃程度の高温でアニールすることにより、オーム性電極の作製を試みた。蒸着条件及びアニール温度、アニール時間を変化させた試料を作製し、それらをマイクロプローバーに接続された電流計で電流電圧特性を評価した。その結果、良好なオーム性接触電極を作製することに成功し、レーザー照射実験に用いるためのオーム性電極作製技術を確立することができた。さらに、この電極間にフェムト秒レーザー照射を行い、電流電圧特性の評価を行ったが現時点では照射による有意差を見いだすことが出来なかった。今後、試料形状や蒸着・アニール条件などのなどの検討をさらに行い、フェムト秒レーザー照射の効果を明らかにする予定である。 一方、上記の研究と平行し、半絶縁性のシリコンカーバイド基板にフェムト秒レーザー照射を直線的に行うことで電気伝導度の評価を行った。光照射によって連続的に作製した改質部に直接プローブを接触させ、電気伝導特性の評価を行ったところ、光照射部において電気伝導度が2〜3桁程度向上していることが明らかになった。さらに、電気伝導度の距離依存性や離散的に作製した改質部間の電気抵抗を測定したところ、この電気伝導度の向上はプローバーと試料間の接触抵抗の低減によるものであることが明らかになった。これにより、シリコンカーバイド表面へのフェムト秒レーザー照射は半絶縁性基板の接触抵抗の低減に有効であることを示すことが出来た。
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