研究概要 |
本研究の目的は,映像信号を暗号化すると同時に観察領域の限定を可能にする情報表示のセキュリティ技術(セキュアディスプレイ)を偏光演算により実現することである.偏光を用いることで,1画素単位で多階調を表現できるメリットがある.最終的にはカラー画像を表示できるセキュアディスプレイのプロトタイプを実現する.第1の達成目標は多階調画像に対する偏光演算アルゴリズムを明らかにすることである.第2の達成目標は,赤・緑・青の各色に対して多階調をもつカラー画像の暗号化アルゴリズムを構築し,偏光演算による復号と観察領域の限定を実証することである.本年度は第1の目標を達成した.すなわち,偏光演算型ディスプレイの製作と多譜調グレイスケール暗号の実現を行った.まず,液晶パネルの積層により,偏光面の回転角度による演算結果を示すディスプレイを製作した.偏光演算型ディスプレイは,背景側液晶(観察者側の偏光フィルムが取り除かれた液晶ディスプレイ)の前に,前景側液晶(バックライトおよびバックライト側の偏光フィルムが取り除かれた液晶ディスプレイ)が設置された構成である.さらに,偏光演算に基づく視覚復号型暗号の構築:積層された液晶パネルを透過後の偏光状態により,背景側液晶パネルと前景側液晶パネルによる偏光回転角度の和を調節することで,多階調グレイスケール表示を可能とする暗号対を構築した.復号実験により,観察領域の限定を実証した.以上,まとめると,従来は空間分割による強度変調で行われていた視覚復号型暗号を偏光変調により実現するアルゴリズムと実証プロトタイプを構築した.
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