研究概要 |
我々は,本研究費のもとでGe自己形成量子ドットを有するSi微小共振器の作製及び評価を行い有用な結果を得てきた。 時間分解フォトルミネッセンス測定ではGeドットを有するSiフォトニック結晶微小共振器中で励起されたキャリアの生存時間が約1nsとなった。これは微小共振器でない部分の生存時間である約30nsに比べて非常に短く,作製した微小共振器によるパーセル効果と表面再結合によるものであると考えられる。 また,Geドットを有するSiマイクロディスク共振器をSOI (Silicon-on-insulator)基板上に作製し,室温にて波長1.2〜1.6μmの領域に強く鋭い共振ピークを得ることができた。これはGeドットからの発光がマイクロディスクによって強く増幅された結果である。マイクロディスクでは二種類の共振ピークを観測し,これらがWhispering-gallery modeによる鋭い共振ピークとFabry-Perot modeによるブロードな共振ピークであることが判明した。以上のフォトルミネッセンス測定ではGeドットの量子閉じ込め効果がGeドットを有するマイクロディスク内の再結合プロセスにおいて重要な役割を果たすことを示している。 その後,発光デバイスにとっての品質を下げているFabry-Perot modeを除去するために,Geドットを有するSiマイクロリング共振器をこれまでより厚い埋め込み酸化膜をもつSOI基板上に作製した。マイクロリング共振器では共振器由来のWhispering-gallely modeに対応した鋭い共振ピークを観測することができたと同時にFabry-Perot modeによるピークを除去することに成功した。この微小共振器の特性を表すQ値は2000〜3000となり,これは我々がこれまでに報告してきた値よりも非常に大きな値となった。このQ値の増大は埋め込み酸化膜を厚くしたことに起因し,導波路と基板の間の結合が弱まったためであると考えている。 現在,我々は電流注入型のGeドットを有するSi微小共振器を作製し,これの評価を行っている。
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