本研究では、多様な中赤外波長域レーザー実現のための波長変換技術に適した新たな非線形光学材料である、マグネシウム添加コングルエント組成タンタル酸リチウム(Mg : LiTaO_3)結晶の基礎特性評価と、これを用いた高出力中赤外波長域レーザー発振を主たる目的としている。研究2年目で最終年度である平成20年度は、以下に示すように、主に実際の大口径波長変換素子の作製と、これを用いた中赤外域光パラメトリック発振実験を行った。 1. 前年度の結果をもとに、Mg : LiTaO_3結晶を用いた中赤外光発生用大口径擬似位相整合波長変換素子の作製を行った。その結果、現段階では3mm厚×3mm幅を持つ素子開口サイズまでは、光学実験に適用可能な精度を持つ素子が実現できた。これに加えて5mm厚結晶でも擬似位相整合波長変換素子に必要な周期構造形成が実現できることを確認した。これにより現段階では最大5mm×5mm幅開口サイズまでの素子を実現できる見通しを得た。 2. 作製した3mm厚×3mm幅開口の中赤外光発生用大口径擬似位相整合波長変換素子を用いて、光パラメトリック発振実験を実施した。波長1.064ミクロンのナノ秒パルス光励起で、出力光の波長は1.65ミクロンおよび3.00ミクロンであり、励起光エネルギー67mJ時に全出力エネルギー24mJを得た。 以上、2年間の検討により、Mg : LiTaO_3結晶の基礎特性評価と、これを用いた波長変換による高出力中赤外光発生を実現し、その有用性を確認した。
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