金や銀のナノ粒子表面に分子が吸着し生じる表面増強ラマン散乱(SERS)分光法では、分子の散乱断面積が最大で10^14倍に増強する。本手法は無標識で多重分子認識を単一分子感度で可能とするため、予知診断技術への応用が期待されている。しかし、その発現機構が定量的には解明されていないためSERS分析は、現象の発見から30年以上たった現在でも実用化には至っていない。私は大高らによって提案された電磁場増強機構に基づき、単一金属ナノ構造体のプラズモン共鳴レーリー散乱・SERS測定とその構造体のSEM測定を行い、FDTD(時間領域差分法)計算により、レーリー散乱とSERSの測定結果を定量的に再現することに成功した。この結果、SERSに関与する全てのパラメータ(プラズモン共鳴、励起波長。分子の電子遷移)を取り込んだ定量的計算モデルを開発した。 SERSのスペクトルは微細構造を待つため、分子認識に優れおり疾病マーカーの多重検出を可能とする。現在、SERS用の検出デバイスとして電子線リソグラフィーなどを用いた金属ナノ構造作成が行われているが、In situで簡便にそのデバイスを作成する新規手法が求められている。私は阪大院基礎エと協力し、安価な半導体レーザーと共焦点光学系を分光システムに導入し、光還元法を用い単一金属ナノ構造の作成技術の開発に成功した。更に、レーザー照射条件を調整することで金属ナノ構造のプラズモン共鳴レーリー散乱を制御出来ることを見出した。電磁気学を用い本光作成技術の理論的基盤を与える計算モデルを作成した。
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