蓄光体は長残光性蛍光体とも呼ばれ、夜光塗料の代替品としてとして開発されたものである。その特性は残光時間および発光波長で決められており、残光寿命特性は、捕獲中心である準安定状態のエネルギー準位の有無、およびそのエネルギーにより決定する。 本年度は衝突作用(核的作用)を生じ、材料中に構造変化をもたらすイオンビーム源としてプロトンを用い、プロトンのエネルギーを変化させながら蓄光体に対して照射を行い、その照射効果を調べた。ここで蓄光体はイオンビーム照射下で強い発光(照射誘起発光)を持ち、その入射粒子のエネルギーに対して依存性を有しているということがわかった。このことから、発光を用いたエネルギー弁別の可能性を見出した。残光寿命を測定したところ、その寿命は入射プロトンの照射量によって異なり、6.8xl0^<20>/m^2以下の照射量では、プロトンの照射量が大きくなるにっれ残光寿命が長くなるということが分かった。プロトンを用いることで発光(捕獲)中心の構造変化、およびそれに伴うエネルギー準位の変化を生成させ、蓄光体の機能(寿命)を改善できたと考えられる。前年度の結果より、イオンビームの核的作用により残光寿命の変化は期待できるが、同時に核的作用により照射損傷も引き起こす1すなわち寿命改善・発光量減少が同時に生じるということが分かっている。しかしながら、本年度の結果では、6.8x10^<20>/m^2以下の照射量では残光寿命の改善効果は顕著であったが、照射損傷による発光量減少は確認できなかった。
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