研究概要 |
主にパラフィンを試料として, 磁気浮上を利用した反磁性磁化率の温度変化の測定を行った. 試料としたパラフィンは融点48-50℃と56-58℃の2種類を用いた. その結果, どちらの試料も融点の20℃程度下から磁化率が僅かに増加し, 融点直下から減少するという定性的には同様な挙動を示すのが観測された. パラフィンを構成する直鎖型飽和炭化水素(n-alkane)は融点近傍の固相で多段の固相-固相相転移を起こし, その転移温度は炭素数に依存することが知られている. そのため, 磁化率の温度変化で見られた融点直下での挙動は固相-固相相転移に伴う磁場配向が起こっているとも考えられ, その因果関係に興味を持たれることとなった. そこで, これを明らかにするために, 単分散のn-alkaneであるn-tricosane(炭素数23, 融点47℃)とn-docosane(同22, 46℃)を試料として同様の測定を行った. その結果, 単分散試料の場合はどちらも, パラフィンで見られた磁化率の増加は見られず, 室温から融点までほとんど変化しないことが分かった. このことからパラフィンでの磁化率の増加は, 固相-固相相転移による影響よりも, 融点の低いn-alkaneが溶融し始めたところで融点の高いn-alkaneのドメインが磁場により配向した可能性が高いことがわかった. また, 上記一連の測定を通して, 固体から溶融状態, さらに再凝固する過程の磁化率変化を連続的に非接触で測定することに成功した. さらに, 測定試料の大きさを2×2×2mm^3に揃えることにより, それ以前には1〜2%程度あった測定間の絶対値のバラつきを0.4%程度に収めることができた. このことは, 小さい試料ほど正確に測定できるという磁気浮上を利用した磁化率測定法の特徴を示していると言える.
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