(1) 研究代表者はすでに中性子波動を空間的に分割・重ね合わせする素子「ビームスプリッティングエタロン」を開発し、これを利用したJamin型冷中性子干渉計の開発によって中性子干渉計の長波長化・大型化の可能性を示している。ビームスプリッティングエタロンは中性子多層膜ミラーを高精度光学基板を用いて配置したもので、そのミラーとして白色中性子を反射できるスーパーミラーを利用することで干渉計を白色中性子に対応させることができる。平成20年度には、複数の波長領域に対して反射できる「多色ミラー」を開発しこれを干渉計に組み込み、「多色中性子干渉計」を構築することに成功した[2008年物理学会で発表]。スーパーミラーを用いた干渉計についても実験を開始している。(2) 中性子スピンエコーは試料のダイナミクスを測定できる準弾性散乱分光装置である。その一種である共鳴スピンエコーでは共鳴スピンフリッパーの振動磁場の周波数が高いほど測定の分解能が向上する。共鳴スピンフリッパーでは振動数に比例した静磁場が必要だが、高周波化に必要な強磁場を安全に発生させることができなかった。平成20年度には研究代表者らは鉄芯入りの電磁石を用いて、従来の20分の1の電力で安全に高周波のスピンエコー装置を組むことに成功した[2008年偏極中性子の国際会議PNCMIにて発表、投稿中]。さらに高周波化に向けて開発を続けている。
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