研究概要 |
波のシミュレーションを行う際、計算磯のメモリは高々有限であるため、計算対象とする領域は有限で打ち切られなくてはならない。このとき、高精度の数値解を得るためには、打ち切り断面という人工的な境界上で反射波が発生しないような境界条件を設定する必要がある。本研究では、近年、Lappasらによって提案されたRiemann不変量多様体の考え方を用いることで、既存のものよりも強力な無反射境界条件を構築することを目標としている。 平成19年度は実際にRiemann不変量多様体に基づく無反射境界条件を,非粘性圧縮等エントロピー流れの場合に構築し,ある種の安定性に関する解析を行った.その結果,Riemann不変量多様体の理論から素直に得られた境界条件は,そのままでは不安定であるという解析結果が得られた.そこで,不安定性の原因となる部分に修正を加え,手法を安定化したところ,結果として既に提案されているThompsonの境界条件と等価な境界条件が得られた.Thompsonの境界条件は現在もよく利用される方法のひとつであり,経験的には頑健であることが知られている.しかし,その導出はいささか強引な方法によってなされており,理論的な解析もそれほど行われてはいない.これに対して,非粘性圧縮等エントロピー流れという仮定の下ではあるが,本研究の結果,Thompsonの境界条件について,既存のものとは別の,素直な導出と安定性に関する知見が得られたことになる.
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