波のシミュレーションを行う際、計算機のメモリは高々有限であるため、計算対象とする領域は有限で打ち切られなくてはならない。このとき、高精度の数値解を得るためには、打ち切り断面という人工的な境界上で反射波が発生しないような境界条件を設定する必要がある。本研究では、近年、Lappasらによって提案されたRiemann不変最多様体の考え方を用いることで、既存の方法よりも優れた無反射境界条件の構築を目指している。2007年度は、この考え方に基づいた無反射境界条件を実際に導出し、その境界条件を与えた場合に得られる解の理論的な評価を行った。その結果、この境界条件は安定性に問題があることが分かった。 そこで、開発手法をより実用的なものとするために、この境界条件を安定化することが望まれる。2008年度は、このことを背景として、離散変分法の研究を行った。離散変分法は、降旗・松尾らによって開発されてきた国産の数値解法であり、エネルギーの保存・散逸性を離散化後にも保ったスキームを導出するという特徴を持つ。そのため、この方法によって導出されたスキームは安定性を持つことが多い。そのため、この手法を本研究にも応用することで安定な境界条件を導出できる可能性がある。離散変分法はこれまで等間隔格子上での利用が主であったが、本研究では、この方法を多次元の非一様格子へと拡張した。また、いくつかの限定された方程式に限るが、混合メッシュへの拡張も提案した。また、Ostrovsky方程式という、エネルギーが積分項を含む方程式への拡張も行った。Ostrovsky方程式についてはノルムを保存するスキームも別途提案・し、数値実験による比較を行った。
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