本研究課題の目的はメガフロート(超大型浮体式構造物)等に代表される長大周期構造物に生じる特異な長時間持続局在振動の特性を非線形力学の立場から定性的に明らかにすることである。「非線形局在モード(ILM)」と呼ばれる空間周期構造系に特有の局在振動に関して、メガフロート系におけるその生成の条件、海面との相互作用、系の振動を特徴付けるパラメータと空間構成パターンの間の関係、および局在振動の制御・脱局在化法等に関して数理的な知見を与えることを目指している。1、今年度はまず、昨年度の研究で存在が明らかになった移動型のILMについて、更に詳細な数値解析を行なった。ILMの移動のパターンは初期条件に強く依存しており、一般に、十分時間が経過した後は、一方の端での「一定の」バウンドを繰り返すことが分かった。これは例えば、宇宙空間に浮かぶ人工衛星の太陽電池パネルのような外力の作用しない周期構造系におけるILMが、端でのバウンドを繰り返した後、最終的に一方の端に捕捉されるのとは大きく異なる結果である。ILMの移動には、一般に、系の長手方向の「バランス」が大きく関係していると考えられ、系の長さの有限性、すなわち「端の存在」の影響が有意に現れていると言える。またメガフロート系に特有の、系の中央以外で定在する新しいタイプのILMの存在を明らかにした。 2、1の解析モデルが系全体のエネルギーが保存される「保存系」であるのに対し、エネルギー散逸効果と強制外力とを考慮した改良モデルを構築し、数値計算を行なった。系全体の対称性が保たれるような外、力を入れると、系の中心で定在するILMが存在することが明らかになった。これまでになされてきたILMについての研究の殆どが保存系を対象としている中で、散逸系でのILMの存在が確認できたことは大変意義深い。散逸系におけるILMの特性を明らかにすることは今後の課題である。
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