研究概要 |
本研究では,一般化固有値問題Ax=λBx(A,Bは正方行列,λは固有値,xはλに対応する固有ベクトル)における,すべての固有値の存在証明,及びすべての近似固有値の精度に関する,理論的に厳密で定量的な保証を,計算機による浮動小数点演算を用いて与える方法,すなわち,すべての固有値の精度保証付き数値計算法を構築した。 この方法は,すべての近似固有値と近似固有ベクトルが得られたときに,すべての近似固有値に対して,1つの誤差限界を与える。このような誤差限界を得ることにより,真の固有値の厳密な存在範囲を定量的に把握することができる。さらに,得られた近似固有値の定量的な品質保証を行うことができる。これは理工学において真に重要な結果であり、この結果の与える意義は大きい。 昨年度に,Bが正則である場合に適用可能である精度保証付き数値計算法を構築した。そこで,本年度はこの方法に関して国内の学会・セミナーで発表した。なお,セミナーにおける発表は,招待講演であった。発表時に聴講者によりいただいた質問・コメントは,固有値λが重複している場合に関するものや,行列Bが特異な場合に関するもの等であった。これらの質問・コメントは本研究の今後の発展に大きく貢献することが期待される。特に,行列Bが特異な場合に関する質問・コメントは,このような場合でも適用可能な精度保証付き数値計算法について考える機会を与えてくれたものであり,大変有意義であった。
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