研究概要 |
交通・輸送機器の信頼性向上と長寿命化, ならびに部材の軽量・高強度化による高速化の促進を目的として, 原子力プラント炉内構造物の応力腐食割れ損傷予防・保全技術として開発・実用化されているレーザピーニング(LP)処理を, 自動車や航空機の構造部材として多用されるアルミニウム合金に適用した. その基本的な疲労強度評価を行うとともに, 放射光を用いた疲労き裂進展観察技術の確立を目指す研究である. 本年度は, 放射光μCTによる疲労き裂進展挙動の非破壊調査に重点を置き, 自動車用鋳造アルミニウム合金AC4CH材, 航空機構造用展伸アルミニウム合金A7050圧延材を対象として研究を行った. その結果, 以下の知見を得た. ○ AC4CH材を用いた研究成果 (1) 試験片内部に存在し, 試験片表面から観察することのできない鋳造欠陥から, 疲労き裂が発生し進展していく様子を世界で初めて三次元的に可視化した. (2) 鋳造欠陥を起点としない表面起点型疲労破壊の場合について, レプリカ法による表面き裂観察結果とμCT観察結果を定量的に比較し, μCT観察結果の妥当性を明らかとした. ○ A7050材を用いた研究成果 (1) A7050材を用いてもμCTによって疲労き裂が観察できることを明らかとした. (2) 疲労き裂と同時に供試材中に存在する介在物を同時に可視化することで, 供試材の圧延方向と疲労き裂の発生位置の関係を特定できることを示した. 放射光μCTを用いれば, 機械構造部材に適用される代表的なアルミニウム合金(鋳造材, 展伸材)に発生した疲労き裂の進展挙動を, 試験片内部のき裂形状も含めて非破壊で直接的に観察可能である技術を確立し, 実際にき裂の観察を行ってその有用性を実証した. 疲労研究の大きな課題となっている内部起点型疲労破壊に関して, そのメカニズム解明に役立つ有用な成果が得られた.
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