研究概要 |
き裂を含む双結晶モデルの引張変形解析を分子動力学計算を用いて実行し,き裂,転位,粒界の欠陥弾性場の発展に伴う粒内転位源から粒界転位源へ遷移することで,モバイル転位の増殖メカニズムを調査した.得られた結果を以下に示す. ある安定な参照構造の粒界近傍の方位差を有する粒界は,その参照構造に対して粒界転位が導入され,その粒界転位成分に起動できる格子転位のすべり系成分が近い場合,すなわち転位放出後の残留バーガースベクトルの大きさが小さい場合,その粒界転位成分に含まれる格子転位成分に応じて荷重を加えることで,格子転位を粒界転位から放出することが可能であることを示した.またこのとき,粒界構造を安定な構造に遷移することで,大量のモバイル転位を放出できる転位源として粒界が機能する可能性を示した. EGBDsの成分とIGBDsの成分が反応することで,粒界内に格子転位のBurgers vectorを形成することができれば,平衡粒界に比べて粒界から転位を放出しやすくなることを示した. 強い応力集中源であるき裂は最初,転位源として機能するが,き裂より発生した転位が粒界に侵入することでき裂先端力学場に対して遮蔽効果を与え,き裂の局所応力拡大係数が低下することになる.一方で,粒界に侵入した転位により粒界の局所応力場は急激に上昇し,応力集中が生じることになる.つまり,転位が運動することにより応力集中場がき裂から粒界に遷移し,粒界構造が安定な粒界構造に遷移することにより大量のモバイル転位を放出することを示した.
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