研究概要 |
骨細胞の力学刺激感知メカニズムと骨細胞ネットワークにおける力学刺激情報伝達メカニズムを解明することが,骨の適応的リモデリングメカニズムを解明する上で重要なキーポイントとなる.本研究では,アクチン細胞骨格メカニクスに着目して骨細胞ネットワークの複雑な力学刺激感知・情報伝達メカニズムを解明することを目的とする.初年度の成果は,以下のように要約される. 1)骨細胞にのみ特異的な抗体(OB7.3)でコーティングしたマイクロビーズを細胞膜に接着させた骨細胞に対して,精密マイクロマニピュレータシステムに取り付けたマイクロニードルを用いて局所力学刺激を付与し,付与した局所力学刺激付与部位の変位を測定する方法を確立した. 2)確立した局所力学刺激付与法を用いて,細胞内カルシウムイオン蛍光指示薬をあらかじめ導入した単離骨細胞の細胞体および細胞突起に対して生理学的レベルの局所力学刺激を付与し,共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞応答をその場観察するシステムを構築した. 3)構築したシステムにより,骨細胞の局所力学刺激に対する応答特性を定量的に調べた.その結果,細胞体への局所力学刺激に対する応答細胞率が8.0%であったのに対し,細胞突起への局所力学刺激に対する応答細胞率は35.0%であった.また,応答発生に要した局所力学刺激量(マイクロビーズの移動量)は,細胞体に局所力学刺激を付与した場合は平均5μm程度であったのに対し,細胞突起に局所力学刺激を付与した場合は平均2〜3μm程度と,細胞突起の力学応答特性が顕著に高いことを明らかにした. 4)生体組織マトリクスおよび内部の骨細胞の定量的ひずみ評価法を確立した.
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