研究概要 |
骨細胞の力学刺激感知メカニズムと骨細胞ネットワークにおける力学刺激情報伝達メカニズムを解明することが, 骨の適応的リモデリングメカニズムを解明する上で重要なキーポイントとなる. 本研究では, アクチン細胞骨格メカニクスに着目して骨細胞ネットワークの複雑な力学刺激感知・情報伝達メカニズムを解明することを目的とした. 2年目の成果は, 以下のように要約される. 1) 生体組織マトリクス内部の骨細胞とその周囲の組織の力学刺激付与による変位量を, 骨細胞にのみ特異的な抗体(OB7.3)を用いた免疫蛍光染色および画像解析により抽出する方法を確立した. 2) 生体組織マトリクス内部の骨細胞について, 2種類の蛍光指示薬を用いたRatiometry法により, 細胞内カルシウムイオン濃度変化を定量的にその場観察するシステムを構築した. これにより, 生体組織マトリクスに付与された変形に対する, 内部骨細胞と周囲組織の変形および細胞応答をその場観察するシステムを構築することができた. 3) 構築したシステムにより, 生体組織マトリクスに対する変形付与によって内部骨細胞がカルシウム応答を示した瞬間の, 内部骨細胞および周囲組織のひずみ量を調べた. この際,内部骨細胞の細胞突起の長手方向ひずみと細胞体の主ひずみ, および周囲組織のGreenひずみを導出した. その結果,生体組織マトリクス内の骨細胞がカルシウム応答を示した瞬間について, 細胞体の最大主ひずみは2%程度, 細胞突起の長手方向ひずみは-6〜2%程度であった. この結果は,in vitro実験系における骨細胞応答発生に必要な基板の引張ひずみが1〜10%程度である事実と良く一致した. 4) 以上より, 骨細胞の力学刺激応答の素過程, および骨組織の巨視的な変形と骨細胞の微視的な生化学応答の関係を明らかにするために必要不可欠な知見を得ることができた.
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