研究概要 |
延性破壊は構造物の破壊事故で頻繁に認められる事例であるが, その破壊挙動は多岐多様である. そのため, 破壊発生後のメカニズムを解明して事故被害低減に臨むには, 未だ多くの未解明問題がある. ここでは未解明問題の一環である延性破壊時のき裂先端近傍のメゾスケールにおける特性と延性破壊挙動の負荷速度依存性を調べることを目的とし, 準静的荷重・衝撃荷重下の非偏心・偏心三点曲げ破壊実験を行った. 破壊現象を観察するために超高速度カメラを用い, 破壊経路やき裂進展速度の計測を行った. また, レーザーフォーカス変位計を用いて実験後のき裂面粗さの計測を行った. 破壊経路は荷重速度に依存して大きく変化した. 準静的三点曲げ試験では, き裂は荷重点方向きに進展した. 衝撃荷重三点曲げ試験では, ガス圧によってストライカーの衝突速度は25m/s程度になっている. このような高速衝突による破壊では, 破壊経路は必ずしも衝突点方向へと直かわないという結果が得られた. 両三点曲げ試験では破面傾斜の様相も異なり, 前者は一方傾斜となったが, 後者は凹凸上の破面が生じた. また破面測定データから算術平均粗さ相当の粗さ分布を評価したところ, 試験片板厚中央部の粗さが表面近くの粗さより高いことがわかった. き裂が進展経路を大きく変える箇所においても粗さの値は増大しており, 微視的な破面粗さにも巨視的な破壊挙動の影響を反映した分布が現われた. 試験片板厚は3mmであるが, このような薄板であってもメゾスケールの痕跡は平面近似できないことが確認できた.
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