研究概要 |
本研究では,押込み法(インデンテーション法)による新しい弾塑性評価を開発することを第一の目的としている.押込み法は,局所的に材料の力学特性を測定できるため,薄膜などの微小材料や微小領域の特性評価を行えるとともに,その特性の分布も把握することが可能である.平成19年年度は,新規な弾塑性評価手法の開発を目的とし,有限要素法のパラメトリック解析から広範囲な材料特性に対する押込み曲線を計算した.そして,得られた結果を整理するために新たな次元解析を提案した.これは,押込み曲線と材料の弾塑性特性を関連付ける無次元関数をあらかじめ構築することで,実際の試験から得られる押込み曲線の結果をこの関数に代入し,材料の塑性特性を逆解析的に推定するというアルゴリズムに基づいている.本提案手法は,一つの圧子で行えること,圧子先端の磨耗などの問題は無い(先端Rに依存しない)鋭利な圧子に適用できること,再現良く取得できる押込み負荷過程から塑性特性を逆解析的に推定することなど,新規な評価法とともに実材料に対しても従来の研究では見られないロバストな測定法になっている.さらに本開発手法を薄膜材料(ダイヤモンドライクカーボンDLC膜)の評価ならびに塑性加工材の塑性特性分布測定へと応用した.DLC膜では,変形特性ならびに破壊特性の評価が実用上重要であるが,本手法を用いることによって,DLC膜の変形特性を定量的に評価することを可能にし,破壊特性を調べる上で重要な知見を得ることができた.一方,塑性加工材では材料の加工硬化による機械的性質の変化を調べることが塑性加工プロセスの最適化において重要であるが,本手法により局所的な塑性特性(降伏応力加工硬化指数,引張強度,予ひずみ量)を推定することを可能にした.また,同一材料に対して複数箇所の特性を評価できるので,本手法は塑性特性の分布(マッピング)測定技術として展開できた.
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