研究概要 |
社会の情報化,機器の知能化によって,電子デバイスの使用範囲は飛躍的に拡大している.これに伴い,電子デバイスの高信頼性への要求がますます高まっている.この要求を満たすには,電子デバイス内部の材料の変形や,強度などの力学的な因子を評価し,その損傷を防ぐことが必要である.これに応えるための非破壊検査技術として,応力のテンソル量が計測できる光弾性法が有効であり,これまでに多くの手法が提示されてきた. ところが,これら全てのシステムは必ず,試料もしくは光学素子を物理的に回転させるか,あるいは光変調素子を利用して,偏光面を電気的に旋回させる必要がある.一般に前者は,微少な応力を厳密に測定できる反面,測定速度の高速化が困難である.これに対して後者は,高速測定が可能となる反面,変調素子の温度に依存する特性が,微少応力の厳密測定への隘路となる. そこで本研究の初年度は,機械的回転あるいは偏光面の電気的な旋回,いずれをも要さない新しい複屈折測定法を考案し,予備実験のシステムを試作した.そして,この予備実験システムを利用して,測定原理の妥当性を実験的に確かめることを試みた.具体的には,位相差79.1nmの試料を,実験装置の光軸まわりに回転させつつ,試料の位相差と,進相軸方位の測定を多数回行った.その結果,複屈折方位角については,試料の回転角にほぼ一致した結果が得られた.しかし複屈折位相差については,規則的な周期で変化している結果を得たため原因を究明している.
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