研究概要 |
ナノファイバーは直径が微小であるため, 相対的な表面積が広く, 分子配列が期待できるなど, 優れた特性を持ち, さまざまな分野において新たな材料として注目されている. しかしながら, その微小さから, ハンドリングが困難であり, また破壊荷重が微小であることから, その機械的特性の詳細は明らかになっていない. 具体的な課題としては, 機械的特性評価用の試験片の作成にあたり, 試験片のハンドリング, すなわちナノファイバーの単繊維を取り出す方法, 試験機に固定する方法などの多くの課題が存在する. 現在, 最も一般的なナノファイバーの製造方法としてエレクトロスピニング法がある. エレクトロスピニング法は溶融樹脂に高電圧を印加し, 電位差を用いてナノファイバーを紡糸する方法である. この製造方法は不織布のような多量のファイバーを紡糸するのに適した方法である. これまでの研究において, 単繊維引張試験片を作成する時には, ナノファイバーの不織布から先端が尖ったガラス棒を用いてナノファイバーを取り出す手法が利用されている.しかし取り出し時にファイバーに荷重がかかるため, その後の引張試験に試験片作成過程が影響を及ぼしている可能性があり, 不織布状ではなく単繊維の状態で紡糸する方法を開発する必要がある. そこで本研究では, 従来の試験片作成方法の課題を解決するために, エレクトロスピニング法の紡糸の際に高電圧を印加し紡糸する原理に着目し, 電位差を用いて, その場で引張り試験片を創製する方法を開発した, さらに, 開発した手法を用いてPLAナノファイバーの引張試験を行った結果, 引張強度は, 223±122MPaであることが分かった.
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