直径0.1mm程度の電極を大電流で1パルスだけ放電(以後、単発放電と記す)を行うと、電極の先端に直径約20μm、長さ約200μmの微細な針状の軸が数百マイクロ秒で形成される。一般的には、WEDGと呼ばれるワイヤ放電研削法などで、把持しやすい電極のその先端を、希望とする直径まで削りだすことで、微細工具が作製されているため時間と労力がかかる。瞬時形成法において、安定した大きさの微細軸が得られるようになれば、微細軸とその作製方法とが有益になる。申請者は、微細軸形成メカニズムを追究し、電極周囲から電極軸中心方向への伝熱による溶融の進展速度を制御することが、軸径の精度向上に重要であることを明らかにした。電極側面への熱供給はレーザーを用いても可能である。 本研究は、従来の放電による電極加熱方式とレーザーによる電極加熱方式を比較検討し、直径が数十μm以下、長さ100μm以上の金属微細軸を、再現性良く作製するための電極加熱条件を探索することを目的としている。研究前の単発放電による微細軸形成精度は、平均軸径が15〜25μmに対して、軸径のばらつきの度合いを示す標準偏差は±2〜5μmであった。 加熱方式として、(1)放電電流の時間的制御、(2)レーザーあるいは高周波による加熱、(3)放電とレーザーの加熱方式の複合化の、3つについて検討した。その結果、本研究において、放電電流を時間的にステップ状に制御することで、軸径が15μmで、その標準偏差が10%未満となる単発放電条件を見出した。
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