研究概要 |
本研究では,マイクロツールのさらなる高品位化に際して,一層の高強度化・微細化と表面機能の両立を達成するため,"サイマルプロセス(同時工程内)"でナノ精度加工と所望の表面機能(高強度化,被膜との親和性,生体親和性)を付与するという,革新性の高い独創的な表面改質加工技術の開発を目指している.本研究期間内には,まず先端が数十ミクロン以下の外径を有するマイクロツールのナノレベル表面品位および極微細形状加工の確立には,超精密鏡面加工の実用技術であるELID(電解インプロセスドレッシング)研削法の原理を応用する.ここでは,マイクロツール(材質;超硬合金)に対して,幾何学的表面性状を数nm(ナノメートル)以下の鏡面,および先端径1μm以下の極微細形状を効率良く実現した.具体的には,平均粒径0.2μmという微細ダイヤモンド粒の突き出し量を厳密に制御するため,1μs以下の極短パルス電解により金属ボンド材を高精度に電解除去し,砥石面の品質を常に維持する新しい電解プロセス技術の確立を目指した.さらに本研究では,薄さ数μmの平板状サンプルを作製し,その表面の化学的特性をXPSにより詳細に分析した.その結果,マイクロツールは,研磨仕上げ材と比較して表面付近の酸素の拡散濃度が高かった.ELID研削プロセスでは,導電性砥石と電極の間に発生する高い電位差により,その隙間に供給されている研削液中において水の電気分解が生じ,水酸化物イオンおよび溶存酸素濃度が著しく高くなるものと考えられる.この水酸化物イオンおよび溶存酸素が,加工によって活性化されたワーク表面へ浸透拡散したものと推察される.この酸素を多く含む拡散層がマイクロツールの強度向上へ大きく寄与したものと示唆された.
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