研究概要 |
実世界の工学製品開発において,設計・製造誤差や使用環境変化などの不確定性が存在する状況下で安定した性能を発揮できる製品設計候補を打ち出すロバスト最適設計探査フレームワークの確立・実証に向けて,今年度は品質工学概念(「性能」そのものではなく,性能を正常に発揮する上で重要な「機能」に着目するタグチメソッド)に基づいた設計問題設定モジュールの開発に取り組んだ.具体的には,スポーツ用シューズソールの材料物性最適設計を例に挙げ,「走りやすさ」の改善を目的とした.走りやすさは具体的に定量化できる性能ではないため,走りやすさの善し悪しに間接的に影響するシューズの機能を調べ,これを定量化することとした.今回は,有限要素法による固有モード解析を通して曲げ剛性(曲げモードの固有振動数)を評価し,固有振動数を最大化かつソール重量を最小化することで走りやすさの改善を実現することとした.以上の設計問題設定モジュールと過去に構築された応答曲面近似(Krigingモデル)モジュールを組み合わせて最適設計探査を実施することで,走りやすさを追求したソールの最適弾性率分布を求めるとともに,走りやすさを保証する上でのソールの剛性・重量の適性バランスに関する詳細な設計情報を提示することができた.以上より,ばらつきを考慮しない通常の最適設計に関しては,品質工学概念に基づいた設計問題設定モジュールの確立および他のモジュールとの統合を完了することができた.
|