研究概要 |
本年度においては,既存の実験装置の改良を行い,特異油膜形状発生時における油膜厚さ計測を行った.また,赤外放射温度計測機による温度計測システム構築の準備も行った.実験は既存のボールオンディスク型の実験装置により,点接触 EHL 状態を作り出して実験を行う予定であったが,既存の実験装置では,荷重及び速度の条件が異なるため,本研究計画における実験条件が要求する高荷重,高速条件に適合できるように改良を行い,油膜厚さ測定が開始できるようにした.また,チャンバーを用いて温度制御ができるようにした.さらに,赤外放射温度計測システムにおいては,赤外線検出器を購入し,次年度において行う温度計測の準備を行った. 本年度の後半に行った実験については,発生メカニズムの議論を行う油膜厚さの情報もこれまでの研究においては不十分であるため,まずこれまで行ってきた lauric alcoholだけでなく, decanol, tetradecamolといった他のアルコール類も使用し,油膜厚さの測定を行った.パラメータとしては,荷重,引き込み速度,周囲温度,滑り率とし,特異油膜形状の挙動を詳細に観察した.その結果,(1) アルコールの融点が高いほど特異油膜形状が発生しやすくなること,(2) 特異油膜形状はせん断率ではなく,速度条件によって変化すること,(3) 周囲温度や荷重の油膜形状への依存性は小さいこと,が明らかとなった.また,特異油膜形状発生のメカニズムを議論するために必要となる赤外線検出器を用いた温度計測については,本年度において,予備実験準備を終えることができた。
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