研究概要 |
本年度においては, 昨年度に改良した実験装置での油膜厚さ計測及び, スポット型赤外線検出器による温度計測システムを用いた実験を行った. 実験装置には, ボールオンディスク型の実験装置を用い, 任意の滑り転がり条件を設定可能にしたが, 温度計測及び高荷重に対応できるように赤外透過材料であり, また, 高弾性率を有するサファイアディスクを用いた実験を行った.そして, 特異油膜形状の荷重依存性を昨年度より広い条件において調べた. また, アルコール類の潤滑油だけでなく, 無極性であるアルカン類を用いた実験を検討するため, 粘度測定を行った. その結果, アルコールを用いた実験においては, その鎖長, 種類によって, 同一荷重, 速度条件であっても滑り条件における油膜形状に差が見られることが明らかとなった. アルカン類については, 融点が上記アルコールと近いものについて測定を行ったが, その際の粘度が極めて低く, このため, 同程度の油膜厚さを形成させるには速度条件をより高速にする必要があり, アルカン類を用いた実験は今回行わなかった. 昨年度において購入したスポット型赤外線検出器を用いた温度計測については, 温度測定の結果, 特異油膜形状発生時の条件においては, 極めて低い温度上昇であるのに対し, 本温度計測システムでは分布計測のために検出器を移動させる必要があり, 分布点の同時測定ができないため, 直径400μm程度の微小領域における温度分布の高精度の測定は困難であった. しかし, 本温度計測システムで得られた結果から, 油膜内の状態は低温度上昇であることがわかり, 推論でしかなかった油膜の固化現象を実験的に裏付けることができた. また, 上記の問題があるものの, 赤外線の検出感度は十分であることがわかったため, 素子を複数個有する赤外線カメラを使用すれば, 高精度温度分布の計測が可能となることが確認できた.
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