研究概要 |
本研究では,壁面近傍における生体高分子の流動性を明らかにすることを目的として,固液界面近傍における超高精度の可視化計測技術を開発すると共に,生体高分子のダイナミクスを記述する数理モデルの構築に取り組んできた.これまでに,マイクロ流路における電場および界面動電現象を対象とした計測技術の確立に成功している.また,粗視化モデルに基づく流動解析により,ナノメータスケールの代表寸法を有する微小流路中における鎖状生体高分子の自発伸張現象について詳細に明らかにしている.これらの成果を基盤として,昨年度は,実際にナノ流路を作製し,その内部における生体高分子の流動性について実験的に検討した.ここでは特に,電場印加条件において観測される生体高分子の電気泳動に着目し,生体高分子の流動性が流路からの幾何学的拘束に依存して変化することを明らかにした.また,流路の代表寸法を系統的に変更し,拘束の強度と生体高分子の流動性について定量的に検討した.さらに,本実験条件における電気浸透流の影響について検討するため,独自に開発した電場および界面動電現象の計測方法をナノ流路へ適用し,多角的な考察を与えた.一方,数理モデルの開発では,DNAを対象としたモデルについて検討し,一塩基分解能で流動現象を解析することが可能な独自の解析手法の構築に成功した.これにより,鎖状分子の詳細構造を考慮した流動解析を可能とした.
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