研究概要 |
本申請研究では,固体高分子形燃料電池(PEFC)のガス流路中のプラギング起因の閉塞水を吸収するために,金属多孔質体の水吸収層(WAL: Water Absorption Layer)をセパレータ内に組み込み,WALで吸収した過飽和水を電池外へ排出する排水溝をWAL下に配置することでプラギングを解消する生成水自己管理型セパレータを開発することを目的としている.WAL単体評価実験において吸水能力が最も高い結果が得られた平均細孔径1μmのWALと,排水能力が最も高い平均細孔径14μmのWALを可視化用PEFC単セルに組み込み,電池評価実験を行った.その結果,電圧変動は,通常電池と平均細孔径1μmのWALを用いた場合は安定しているが,平均細孔径14μmのWALを用いた場合は小さな電圧変動と周期的な大きな電圧降下が生じていた.とくに,平均細孔径14μmのWALを用いた場合,閉塞率が大きくなっているところで電圧低下が生じていることから,この周期的な大きな電圧降下はプラギングの影響であるといえる.また,平均細孔径14μmのWALは,吸水能力が弱すぎてプラギングの解消につながらず,電池基本特性においても高電流密度域で急激な性能低下が見られた.一方,平均細孔径1μmのWALは,流路中にプラギングが生じてもWALに吸水され,排水溝を通ってうまく排水されている様子が観察できた.また,電池基本特性も良好であり,プラギングの解消において有効であることがわかった.しかし,通常電池と比較して内部抵抗が大きいために,流路内の閉塞率が低い状態にあるにもかかわらず,通常電池と同程度の性能しか得られていない.
|