研究概要 |
本年度は,初期の2研究フェーズである「システム構築」および「観察実験実施」を実施した.高精度計測システムを構築し,システムの妥当性評価を行うとともに,データの取得を行った.非定常拡散場の計測を行うにあたっては,代表者が既に設計開発していた約10μLの試料で物質拡散係数が測定可能な拡散セルを用い,位相シフト干渉計に設置することで拡散場を観察した.また,本システムに用いている位相シフト技術を高精度計測用に改良するため,新たに光学部品を購入し,装置固有の測定誤差要因を除去する改良を行った.この結果,ノイズによる実験誤差を低減し,高精度計測が可能なシステムの確立を図ることができた. 計測システムの改良後は実験手順の最適化を行った.本研究で使用した拡散セルは構造上,濃度場内に初期擾乱を生じる.この擾乱は,セルのせん断速度および内部流体の粘性に大きく依存することが容易に推測できるため,実験条件に則した内部微小流れ場を詳細に数値シミュレーションすることによって,擾乱が最小となる実験手順を決定した. 数値解析により実験運用手順の最適化が見積もられた時点で,観察実験を実施した.本年度は溶液の濃度と緩衝液pH値を変化させ,観察実験を行った.パラメータとしての濃度およびpH値は,医学的見地からヒトの体内環境を模擬した範囲内で変化させ,データを取得した.得られた結果より溶液が酸側に偏ると拡散現象が促進され,その促進度合いは濃度に依存することを実験的に明らかにした. なお,上記研究成果の一部は国内外の学術講演会にて発表を行っており,評価を得ている.また,次年度においても成果の発表を予定している.
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