研究概要 |
研究最終年度の本年度は, 前年度構築した高精度計測システムを用いて, 後半の2研究フェーズである「データベースの構築」および「拡散現象モデル化」に重点を置き, 研究を遂行した. また, 研究期間の最終年度であるため研究の総括を行った. 「データベースの構築」においては, 医学分野で必要とされるヒト体内環境下でのタンパク質物質拡散係数を測定し, データベースの構築を図った. 昨年度実施したタンパク質物質拡散現象の濃度・pH依存性の評価も併せて条件ごとに整理し, より重要とされる条件下においては, 更なる追加実験を施すことでデータベースの充実化を図った. また, セル内における非定常拡散場の計測において, 濃度場形成における初期条件の違いによるデータの不確かさを評価した. これにより, 得られたデータの信頼性が向上された. 「タンパク質物質拡散現象のモデリング」においては, これまでに得られた実験結果から, ヒト体内ではタンパク質周囲の濃度・pH環境が消化プロセスにおいてどのように物質拡散現象に影響を及ぼし, どのようなモデルが適応可能か検討を行った. パラメータとしての濃度およびpHは, 医学的見地からヒトの体内環境を模擬した範囲内で変化させ, 評価を行った. 得られた結果より, タンパク質の物質移動現象に係るpHの影響は濃度のそれよりも大きいことがわかり, 系内におけるタンパク質同士の相互作用よりも電気的もしくは静電的作用が重要な要素となっていることを実験的に明らかにした. これにより, タンパク質表面に帯電する電荷を重要パラメータとしてモデル化を行った. 以上, 研究年度内に得られた成果の一部は国内外の学術講演会にて発表を行っており, 多くの評価を得た.
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