研究概要 |
自由界面,及び固体界面を介する熱・物質輸送現象の理解と予測は,工学,及び地球環境科学の分野において,基礎的、且つ重要な問題である.本プロジェクトでは,高シュミット数における界面近傍のミクロな濃度境界内部の輸送現象から,界面遠方のマクロな乱流運動に至る階層的な輸送過程を解明し,物理現象に基づくモデリングを行うことを最終目的としている.本年度は,以下の成果が得られた. 1.界面近傍におけるミクロな輸送過程のモデリング 自由界面から,汚れ界面,固体壁面に至る,異なる力学的条件を有する界面を系統的に考察し,界面の力学的条件を考慮した物質輸送モデルの構築を行った.その結果を国際会議で公表し,Selected paperにも選出される等,国際的にも高い評価を得た.また,物質輸送の観点から,自由界面と固体壁面の本質的な違いを明らかにし,その結果を,国際学術雑誌に公表した(Int. J. Heat and Fluid Flow, Vol.28, pp.1192-1203,2008). 2.変形界面近傍における物質輸送機構 過去の解析は,平滑界面を対象として構築された一方,現実の気液界面や工学における伝熱面形状は,複雑形状を有しているため,その影響を明らかにする必要がある.本年度は,界面適合格子を用いた計算コードを開発し,界面波と乱流の効果を分離することで,両者の界面物質輸送に対する寄与を調査した.その結果,界面波は乱流と同等の寄与があることが明らかとなり,その結果は,次年度の国際会議(ICTAM,2008)で発表予定である. 3.高レイノルズ数における階層的輸送機構の解明 壁面摩擦速度に基づくレイノルズ数Re=650における高シュミット数Sc=100の計算を行い,階層的な輸送機構の解明を進めている.その成果の一部は,次年度の国際会議(ETMM7,2008)で発表予定である.
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