研究概要 |
研究代表者は、はっ水性微細凹凸表面における流動抵抗低減現象について,流動抵抗の原因となる固液接触面積を減らしつつ,固液接触のない短い突起で濡れ領域の拡大を防ぐ(気体層を保持する)ことを目指して,複数の突起高さを持つ表面を考案し,実験において流動抵抗低減率の向上を明らかにしている.濡れ現象については各突起パターン間の差を確認できているが,本研究ではその定量的な評価のために新たな実験手法を提案し,はっ水性微細凹凸表面の気体保持能力と濡れ領域の拡大に伴う気液界面の移動速度との関連付けを目的とする. 実験では,一方向からの水の流入によって気液界面が移動するように,ガラス平板を長突起端面に接するように設置し,狭い隙間を気液界面が移動する(濡れの進行する)速度をビデオ撮影により観察・評価した.突起パターンは5種類用意した.濡れ領域と乾き領域は明暗となって画像上に現れこれを2値化することで濡れ先端位置を評価できる.またWashburnの式を今回の流れ場に即して修正し実験値と解析値の比較も行った. 実験値と理論値を比較すると濡れ先端位置の経時変化や各パターン間の大小関係はほぼ一致していると言える.気液界面位置は理論式が示すとおり経過時間の平方根に比例して移動した.また,はっ水性表面の(実際の表面積)/(見かけの表面積)が大きいパターンほど移動速度が遅いことがわかった.これは,気液界面における濡れを妨げる方向の表面力が大きくなるためであり,濡れにくい表面を設計作成する上でこの表面積比が有効な指標となるものと考えられる. なお,本年度の目標として掲げていた突起数ピッチ分の視野での観察や表面形状解析ソフトでのシミュレーションの実施は不十分であり,次年度に実施する予定である.
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