研究概要 |
本研究の主目的は,圧力こう配と主流乱れという二つの操作パラメータを操作変数として,1)それらの変化に対する乱流温度場の応答特性を同定し,熱輸送機構を解明する,2)熱線・冷線多点同時測定技術により,時空間構造の詳細を明らかにする,3)系統的に収集した実験データを整備し公開することにより,乱流熱輸送機構のモデリング分野に信頼性の高いデータベースを提供する,ことである。本年度は,主流乱れ発生装置の改良と風洞実験を行った。 1、現有の主流乱れ発生装置では,特定の周波数(スケール)にエネルギーを注入することが可能であるが,乱れ強さが2%程度と小さい。本研究ではそれらの制約をなくして,相対乱れ強さ10%程度で慣性小領域のスペクトル帯域を持つ主流乱れを発生できるように主流乱れ発生装置を改良した。具体的には,多数の羽を格子軸に取り付け,ステッピングモータで各軸を低周波数で振動させる方式を採用した。主流乱れのスペクトルを熱線流速計で測定し,慣性小領域の存在を確認した。 2.非等温場における熱線の温度補償をリアルタイム処理するため,高速デジタル信号処理機(DSP)を用いたデジタル処理技術を適用し,データ取得および補償・評価のオンライン計測システムを構築した。極細抵抗線からの温度変動信号を,熱線流速計から得られる熱伝達率の補正に用いた。補正された速度は主流温度の影響を受けず,等温場と同様の検定結果となった。 3.上記の主流乱れ発生装置および計測システムにより,主流乱れの大きさやスケールを系統的に変更した場合の温度境界層内乱流構造の実験データを取得した。主流乱れの影響で,外層の大部分で主流との平均温度差が低下し,主流の乱流構造が低温流体を伴い深く流入することが明らかとなった。
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