研究概要 |
本年度は, 高温空気燃焼の可燃限界に対する熱損失の影響について検討を行った. 実験炉として, 内径160mm, 高さ800mmの円筒型小型燃焼炉を用いた, 燃焼炉側壁にはヒーターが設置されており, ヒーターの加熱により火炎から側壁への熱損失を低下させることができる. この際, 熱電対と温度調節器を用いた制御系により, 側壁温度を所定の値に保つ. 炉底部中央に設置された内径2mmの燃料ノズルからプロパンが, 燃料ノズルと同軸の外径65mmのスリット型ノズルからは高温酸化剤が供給される. 酸化剤は空気と窒素の混合気であり, 酸化剤の最低酸素濃度は3%である. 酸化剤予熱温度は最高870℃である. 燃焼炉出口で測定される既燃ガスのCO濃度が300ppmを超えた場合を不完全燃焼とし, 可燃限界を決定した. 本年度は, 側壁温度を制御しない場合と, 700℃一定の場合における可燃限界について検討を行った. 700℃一定の場合の熱損失量は, 側壁温度を制御しない場合より10%程度低下する. 酸化剤予熱温度770℃で側壁温度の制御が無い場合, 酸素濃度12%で不完全燃焼を起こす. 高温空気燃焼の特徴であるフレームレス火炎は確認されない. これに対して, 側壁温度を700℃一定とし熱損失を低下させた場合, 酸素濃度4%まで火炎を維持できる. この際, 酸素濃度8%でフレームレス火炎が確認できる. つまり, 酸化剤予熱温度770℃の場合, 熱損失を10%小さくすることで, 高温空気燃焼の限界酸素濃度は12%から4%まで低下する. 以上の結果から, 高温空気燃焼場において, 熱損失の低下による低酸素濃度側への可燃限界の移動が明らかとなった. この可燃限界の移動は, 消炎スカラー散逸率の温度依存性に起因すると考えられる.
|