本年度は研究計画に従って、まず既存の可変真空紫外レーザー光イオン化質量分析装置の改造を行い、さらに分析装置にマッチした高速圧縮機の設計製作を行ってその動作試験を行った。分析装置の改造においては、排気系の改良によりほぼ完全なバックグラウンド・フリー化を達成し、その結果として、C6不飽和炭化水素を用いた検出感度試験においては全圧2atmサンプルガスに対し10ppm以下の感度を得ることに成功し、改造前の水準に対して、信号対雑音比として1桁以上、信号対バックグラウンド比として2〜3桁程度の感度向上を実現した。可変真空紫外レーザーを用いたシステムの感度としてこのような高感度検出を行った例は過去にほとんどみられず、固定波長の高出力固体レーザーやシンクロトロン放射光を用いたシステム等と比較しても高水準の数値と考えられる。今後レーザーシステムや電子回路の最適化を行い、さらなる高感度化を目指す予定である。高速圧縮機の動作試験においては、最高圧縮比22.6でのアルゴンガス単一での圧縮により推定最高到達温度1600Kを達成した。理想的な断熱圧縮と比較して若干熱損失があるものの、圧縮ピストンのストロークが比較的長い(約1m)圧縮機として想定の範囲内である。また圧縮比の調整により、1000〜1600Kの範囲において自由に到達温度が可変できることを確認した。本機により反応性ガスを圧縮し、反応後の分析を行った。反応性ガスとしてブタン・酸素の当量混合気を用い、最高到達温度1500Kの条件にて圧縮後、ただちに反応の進行が確認された。また、芳香族炭化水素の燃焼反応機構に関する理論的解析を行った。
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