研究概要 |
本年度は,測定装置の基本要素の開発と性能評価.ならびに測定原理の有効性確認を目的として研究を遂行した.まず,液体中ナノ粒子の挙動をシミュレーションし,パラメトリックスタディを行ったところ,温度条件の影響が極めて強いことが明らかとなった.外部温度を別途計測するのではなく,流体温度を局所的に計測し,その温度情報を粘性率導出に用いることで,温度分布が存在する系にも適用でき,より高い汎用性を有する計測手法につながるため,温度と粘性率の局所同時計測を行うための装置開発を行った. 蛍光顕微鏡に全固体励起小型ブルーレーザ(主要購入備品)を組み込み,高い安定性で微小スケールにおける蛍光観察が可能なシステムを構築した.測定装置の温度管理は重要であり,高い温度安定条件が要求される.そこで,厚さ200μmの銅製マイクロチャネル5層を接合した恒温プレートと恒温水循環装置から構成される高精度温度調節装置を設計・製作し,安定した実験条件の設定を可能とした. 測定試料にナノ粒子と蛍光色素を添加し,色素の蛍光強度より温度を求め,その温度情報を用いてナノ留意運動解析から粘性率を算出することで,温度・粘性率同時計測法を実現するため,マイクロLIF(レーザ誘起蛍光法)を用いた温度計測システムを開発し,温度範囲10〜60degC,空間分解能530nmで温度計測が可能であることを実験的に確認した.また,容積300pLの溶液中の蛍光ナノ粒子挙動に対して,画像処理を用いて粒子位置をトラッキングし,粒子がランダムなブラウン運動を実現していることを確認した後,蛍光強度分布の時間的推移を解析する相関解析アルゴリズムを適用したところ,有為な信号の検出に成功し,微量液体の粘性率測定法の確立に大きく近づいた.
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