研究概要 |
本研究は, 微量液体試料の粘性率に関する光センシング手法を原理から新たに開発することを目的としている. 本年度は昨年度に構築した計測システムの高度化並びにフィージビリティスタディを特に重点的に行った. 微小粒子の挙動を正確に把握するためには計測タイミングの精密制御が必須であり, そのためにパルスジェネレータを導入し, ナノ秒レベルの高精度な時間制御を可能にした. また, 高NAを有する油浸対物レンズを導入することで, 計測切片を薄くして測定領域の微小化を行った. 続いて, ナノ粒子の粒径及び粒子濃度の影響について実験的な検討を行い, 粒子サイズが大きいほど相関緩和時間が長くなること, 並びに画像内に粒子数が確保される条件下では粒子濃度の依存性が低いことをそれぞれ確認し, 理論解析と同様の傾向を得た. 続いて, 濃度を変化させたグリセリン水溶液を試料に用いてナノ粒子を懸濁して実験を行い, グリセリン濃度の増加によって相関緩和時間が長くなることを確認し, 粘性変化に対応した信号の取得に成功し, 本計測手法の有効性を示した. また, 同試料に流動を与えた条件でPIVによる流速測定を行い, 速度の算出が十分可能であることを確認し, 多次元計測への適用性を示した. ガラス及びポリイミドを用いて, 必要試料容量100nL, 測定部容量100pLの物性計測用微小デバイスを制作し, これまでの容器を用いた場合と同様の信号取得が可能であることを確認した. 最後に研究を総括し, 本手法を用いることで多次元情報の計測が可能なマイクロチップへの発展が可能になることを示した.
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