研究概要 |
本研究は,レーザ誘起蛍光法を応用した,乱流火炎にも適用可能なナノPM前駆体診断システムの開発を目的としている.そこで,高繰返しパルス発振が可能な半導体レーザ励起固体レーザと,高速・高繰返しゲート機能を備えた光電子増倍管モジュールを組み合わせた診断システムを構築した.ナノPMの前駆体とされる多環芳香族炭化水素は,火炎内において複数種の多環芳香族が同時刻に同じ位置に存在するため,多環芳香族の励起波長や蛍光の発光波長域,蛍光スペクトル形状および蛍光寿命の違いを利用して多環芳香族を分離計測しなければならない.そこで,火炎内で生成される主要な多環芳香族炭化水素について,火炎内での状態に近い気相状態を作り,これにレーザ光を照射して分光器により蛍光スペクトルを取得し,基礎データベースの構築を行った.また,レーザ光により励起した多環芳香族炭化水素が励起準位から種々のバンドに緩和する過程は分子の大きさや構造によって異なり,これにより蛍光寿命が変化する.この蛍光寿命を,光電子増倍管モジュールを用いた蛍光強度変化の時間分解計測より求めることを試みたが,本システムでは多環芳香族の種類の違いによる明確な差異は確認できなかった.原因として,蛍光強度が不十分であったこと,また,光電子増倍管モジュールの時間分解能が不十分であったことなどが考えられる.今後は診断システムの最適化を行い,実火炎を対象とした計測を実施する予定である.
|