研究概要 |
本年度は,昨年度開発した装置をナノスケールギャップヘと適用し,ガラス壁に閉じ込められた電解質溶液の拡散係数の特異性の測定が可能な実験系を構築し,ナノ空間拡散係数測定の実験を行った.実験は主に水系で行った.具体的には以下に示す成果を得た. 1.ヘテロダイン光学干渉技術を用いたナノスケールギャップのアクティブコントロール技術の確立 昨年度開発した装置では,数百nm程度までは実現できたが,数十nmのギャップを定量的に,かつ実験的に確実に実現することは困難であった.そこで本年度は,測定の空間スケールの微細化を進めるため,ギャップの検出機構にヘテロダイン干渉技術を導入し,この測定値をピエゾコントロールにアクティブフィードバックすることで,60nm程度のナノギャップの形成技術を確立した. 2.再現性の向上 ナノスケール空間中における拡散係数,粘性率の特異性を明確に検出するため,測定の再現性の向上を図った.屈折率変動の検出機構を差動検出方式とし,更に,ロックイン検出することで,信号の再現性を格段に向上させた.測定値自体の再現性は必ずしも向上しなかったが,これは測定系の問題ではなく,固液界面での温度や濃度の揺らぎに依存するものと考えられる. 3.フォトクロミック分子の拡散係数異常を検出 石英ガラス壁と電解質溶液の相互作用による電気二重層の影響により,ナノスケールギャップ中での拡散現象が特異性を持つのではないかという予想を,実測により検証した.100nm程度のギャップ間隔では,明確な特異性は検出されなかった.このギャップ間隔では,拡散係数の特異性は測定の不確かさの範囲内で,検出は困難であった.
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