本研究の目的は、部分予蒸発液滴の燃焼過程において発現するTriple Flame状の火炎構造の基礎特性を明らかにすることである。具体的には、弓形の予混合火炎部の形状、OHラジカル発光画像の解析に基づく反応強さ、弓形の予混合火炎部と後方の拡散火炎部が交差する点の液滴表面からの距離(Stand-off distance)の3点が予蒸発の進行度に伴いどのように変化するかを微小重力実験により明らかにする。また、非定常数値解析結果と微小重力実験結果の比較により、実験のみでは明らかにすることが困難なTriple Flameの形成・発達・伝播プロセスに関する詳細なメカニズム解明を行なうものである。 研究最終年度となる本年度は、昨年度の実験結果も踏まえ、微小重力実験用装置の改良をまず行なった。本研究では微小重力実験の手段として、北海道赤平市にあるNPO法人北海道宇宙科学技術創成センターの3秒級落下塔(コスモトーレ)を利用した。コスモトーレ落下カプセルに搭載するために昨年度に製作した実験装置は、燃焼容器、液滴列生成装置、液滴移動装置、観察装置、制御装置などで構成される。観察系にはOHラジカル発光を観察するための光学系も搭載されている。昨年度の実験結果を反映し、装置全般にわたる改良を行った後、微小重力実験を実施した。その結果、部分予蒸発液滴の燃焼過程について直接映像およびOHラジカル発光画像を取得することに成功した。 また、昨年度から引き続き、研究代表者がこれまで使用してきた非定常数値解析コードによる数値計算も行い、Triple Flame状火炎構造の検討を行った。微小重力実験の結果と数値解析の結果は、定性的に一致することが確認された。一方、Triple Flame状の火炎構造の詳細を実験的に明らかにするためには、光学系のさらなる改良が必要であることも明らかとなった。
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