研究概要 |
切削加工を行なうときに加工条件が悪いと, 再生びびり振動が発生することがある. びびり振動は, 仕上げ面精度を悪くしたり, 激しい振動による工具の破損や摩耗の促進を引き起こす原因になっている. びびり振動を防ぐためには工具の軸方向切り込み深さを減らしたり, 低速で切削することで回避可能ではあるが, 加工効率の点では不利となる. 近年, 金型成型や部品加工で高速化や高精度化の要求に応えるために, びびり振動を回避する切削条件を把握することが重要な課題となっている. 本研究では, エンドミル加工時の動的シミュレーションモデルを構築して, 事前に実験を行なうことなくシミュレーションからびびり振動発生の診断を行なうことを目的とする. 本年度は, 工具・主軸系を2自由度でモデル化し, 固有値解析を行なうことでびびりの発生限界線図を求め, 初年度の実験結果と比較した, 以下にその結果を示す. 1. 工具系を支持する動剛性が固定座標系に対して異方性を有し, さらに工具系の振動試験結果から固有振動数および剛性に差があるモデルを考慮して固有値解析をおこなった. その結果, 発生限界が極大値となる回転数が上向き削りと下向き削りともに実験結果とよく一致した. 2. 切削中の切れ刃と1つ前に切削した切れ刃との振動の位相差を見た結果, 発生限界が極大値となる位相差は0°付近であり、位相差をみることでおおよそのびびり振動の発生限界の予測が可能となった. 3. 2自由度の簡易モデルで, 実験結果をおおよそ予測することができたが, 切り込みが小さい場合や下向き削りの結果が実験結果とあまり合わなかったことが今後の課題として残された. 次年度はこれらの数値計算結果を踏まえ, 解析モデルおよび解析法の改善および研究の総括を行なう予定である.
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