平成19年度は、本研究の第一段階と位置づけ、提案手法の実現性をボトムアップ的に検証するため、要素技術の検討と検証モデルを開発した。具体的には(1)〜(3)に示す要素技術に関して、手法の提案と数値解析による有効性の検証を行った。 (1)CMGを搭載した人工衛星における、CMGシンバルモータ部から生じる非線形ダイナミクスに起因する電気的および機械的擾乱やRWと同様のロータの質量アンバランスに起因する擾乱などの内部擾乱を考慮した高速姿勢制御則によるアジリティ向上手法の提案を行った。具体的な多点指向ミッションを設定し、シミュレーションによる提案手法のフィージビリティの検討を行った。 (2)高速・低擾乱の姿勢コマンド生成も含めたミッションマネジメントアルゴリズムの開発し、周期的未知内部擾乱の実時間推定法を提案し、数値解析により推定精度の検証を行い、推定値を利用したフィードフォワード補償により能動的内部擾乱除去フィルタを構築した。 (3)耐故障性を有する宇宙機姿勢制御用アクチュエータシステムの実現に向けて、代表的な非線形制御手法の一つであるスライディングモード制御手法を用いた劣駆動姿勢制御手法を提案し、アクチュエータ故障時であっても、残ったアクチュエータを用いて姿勢変更が可能であることを確認した。 また、提案手法の検証や問題点の早期発見には実験装置が必要不可欠であることから、平成19年度の前半は理論解析・数値解析と並行して、地球観測衛星実験装置の整備を行った。
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